Service 私たちの仕事
1 修復
2 調査・分析
3 コンディションレポート作成
4 展覧会コンサヴェーション
5 作品保全
6 研究・講演活動
私たちの仕事は、作品が本来持っているものを明らかに示すこと(Revelation)と、その構造や組織や状態を調査すること(Investigation)と長く守り伝える保存(Preservation)のRIPバランス・トライアングルの中に含まれています。
メインの仕事である「修復」は、これら3つの要素のバランスのなかでその方向性が決定づけられます。様々な角度からの調査に基づいて、どのように保存するべきか関係者と話し合い、修復が形作られていきます。検査・診断に基づいて、患者の価値観や年齢や家族との関わりについて考え、協議を重ねて治療方針を決める、という医療に例えると分かりやすいかもしれません。
トライアングルの頂点にあるのは「調査」で、修復の仕事を牽引する最も大切な要素です。ここでの「見る」技術力を使って、作品の調査・分析業務、コンディションレポート作成業務、展覧会コンサヴェーション業務を行っています。
トライアングルの右下を支えているのが「保存」の知識と技術です。私たちは、専門家と協力しながら、作品を取り囲む小さな環境(額やケース)と大きな環境(収蔵環境)の改良・改善に関わる業務にも取り組んでいます。
こうした業務で得られた情報は、豊かな作品鑑賞につながる果実でもあります。私たちは、執筆、講演、シンポジウムへの協力などの活動を通して、この果実を発信し、広く文化財保存のために貢献したいと思っています。
業務内容と実績
1 修復
専門領域:近現代西洋絵画を中心に、古典的技法の西洋絵画からミクストメディア(混交技法)の現代美術まで多様な技法の作品の修復に取り組んでいます。
実績:(2018年)中西夏之、16世紀フランドル絵画、アルフォンス・ミュシャ、ジョルジュ・ルオー、山口蓬春、ヴァシリ-・カンディンスキー、マリー・ロ-ランサン、ファン・ゴッホ、モーリス・ド・ヴラマンク、勅使河原蒼風、18世紀チェンバロ蓋、ジャン・フランソワ・ミレ-、熊谷守一、藤田嗣治、山口啓介、クロード・モネ他。 美術館、企業、ギャラリー、個人の依頼により工房もしくは美術館内で修復しました。
2 調査・分析
光学調査(通常光、紫外線、赤外線、X線、実体顕微鏡)及び企業や大学の協力により科学分析、材質調査、カビ調査などを実施し、展覧会図録、紀要などで発表しています。
実績:(2018年)
ファン・ゴッホ作品とクロード・モネ作品の科学調査を(株)堀場テクノサービスと東海大学の協力を得て実施しました。
3 コンディションレポート(状態調書)作成
iPadを活用したレポート作成を今年度よりスタート。これまでより迅速に英和文で作成できるようになりました。マッピング資料と添付写真で信頼度の高いレポートを提供します。
4 展覧会コンサヴェーション
工房の修復士によって以下の展覧会の作品保全・点検業務を担当しました。
(2018年実績)
・ゴッホ展 巡りゆく日本の夢
・北斎とジャポニスム―HOKUSAIが西洋に与えた衝撃
・プラド美術館展-ベラスケスと絵画の栄光
・オルセー美術館特別企画 ピエール・ボナール展
・ムンク展―共鳴する魂の叫び 他
(2019年実績)
・クリムト展 ウィーンと日本1900
・松方コレクション展
・カラヴァッジョ展
・コートールド美術館展 魅惑の印象派
・バスキア展 他
(2020年実績)
・ハマスホイとデンマーク絵画
・ロンドン・ナショナル・ギャラリー展
・画家が見たこども展
・ピーター・ドイグ展
・STARS展 現代美術のスターたちー日本から世界へ 他
5 作品保全
大型作品の輸送・展示に伴う保全作業、文化財のカビ除去、保存額装(額の修復・改良)、など作品の保管・保全・保存に関わる業務も行いました。
6 研究・講演活動
代表 森直義の最近の主な執筆・講演は以下の通りです。
・修復家へのインタヴュー「ジャコメッティ展」
国立新美術館研究紀要(第四号2017年12月発行)に執筆。
「ジャコメッティ展」の際に来日したフランスの修復家にインタヴューし、彼らの活動を紹介。
・公開シンポジウム「美術館と現代美術 作品展示と保存」福岡市美術館主催
2017年12月パネリストとして講演。
古典的絵画と現代美術修復事例の比較を通した考察を述べた。
・講演「アトリエのルオー」2018年4月山形美術館
ジョルジュ・ルオーの作品調査・修復を通して分かった画家の特異な技法とその魅力について話した。
・セミナー「展覧会におけるコンディションチェック」横浜美術館
2018年12月講演。
コンディションレポート作成の意義と技術について、学芸員他美術館職員を対象にレクチャー。
・講演「山口蓬春の初期油彩画の調査・修復から」山口蓬春記念館
2018年12月講演。
山口蓬春の初期油彩画の調査・修復から得た知見を述べた。
・透かして見ると-磨き上げた「乳白色の下地」-
別冊太陽271藤田嗣治 2019年3月発行に所収。
作品を透かして見ると何が見えるか、藤田嗣治の光学調査からの知見を述べた。
・そのままのモネ-《ジヴェルニー付近のリメツの草原》-
モネ作品集 安井裕雄著 東京美術2019年3月発行に所収。
モネ《ジヴェルニー付近のリメツの草原》の調査・修復から得た情報を分析し、晩年の様式につながる技法について述べた。
・ファン・ゴッホ《静物、白い花瓶のバラ》
印象派からその先へ―世界に誇る吉野石膏コレクション展 図録(2019年4月)に執筆。蛍光X線分析顕微鏡を用いた元素マッピング調査を分析。残されたサインの意味を考察した。
森絵画保存修復工房 概要
設立 :1994年
所在地:神奈川県葉山町(横浜横須賀道路 逗子ICから7分、最寄り駅 JR逗子駅)
設備 :セキュリティシステム、24時間空調、絵画ラック、大型作品搬入可
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